よくある質問

Q

子宮筋腫とは ? その原因は ?

A

子宮筋腫は子宮にできる良性腫瘍で、硬いコブです。発生の原因はわかっていません。
悪性腫瘍(がん)は他の臓器にまで広がって、死ぬ病気ですが、良性腫瘍は他の臓器に広がらず、死ぬことはありません。
子宮は厚く平たい袋状の筋肉でできていてキウイくらいの大きさですが、妊娠中は女性ホルモンが急増し急速に大きくなります。
子宮の筋肉から発生した子宮筋腫も、女性ホルモンに反応して妊娠中はどんどん大きくなります。
お産の時、赤ちゃんが生まれてくる原動力となる「陣痛」は、子宮筋の収縮です。生理の出血も同じように子宮筋の収縮により排出されます。
子宮が筋肉でできているのはこのような理由があり、子宮筋腫は子宮の筋肉から発生した腫瘍なので、女性ホルモンにより発育するという性質を持っているのです。

Q

子宮筋腫の症状は ?

A

子宮筋腫は大きくなっても無症状のこともあり、検診でたまたま発見されることも珍しくありませんが、「生理痛、生理の量が多い、血の塊が混じる」などがよくある症状です。出血が多いと貧血になるので、貧血が子宮筋腫発見のきっかけとなることもあり,子宮筋腫は女性の貧血の主な原因です。
筋腫があっても、まったく症状がないこともあります。やせた人では、リンゴやメロンくらいの大きさの子宮筋腫があれば、下腹がふくらんで「なにか硬いものがある」と気づきますが、「中年太りかな ? 」としか思わない人もいます。
子宮筋腫がスイカやラグビーボールくらいに大きくなると、膀胱や骨盤内の臓器を圧迫し、「尿が近い、下腹部が重苦しい。腰や下肢が痛みしびれる」などの訴えが出ることもあります。

これに対して,内側に向かって発育する「粘膜下筋腫」では,サクランボくらいの大きさでも生理の量が多く,日数が長くなり,大きくなると出血が止まらないことも起きてきます。これは,生理の出血の場である子宮内膜(粘膜)に影響する部位で発育するからです。
筋層内で発育した子宮筋腫「筋層内筋腫」では,小さなうちはめだった症状はありませんが,生理時の子宮筋層の収縮が不均等に過剰に起こるため,生理痛が強くなります.また,筋層内筋腫が大きくなると,漿膜下筋腫の症状と粘膜下筋腫の症状を併せ持つようになってきます。
子宮筋腫の症状は大きさよりも,できている場所によって大きく異なるのです。子宮筋腫は一個だけしかないこともありますが,たいていは複数個できてくるので年季が入った筋腫持ちの人では3種類のタイプの筋腫が混じっていることが多くなり,症状も強くなってきます。

Q

エコーでたまたま子宮筋腫が見つかった。どうすればいいですか ?

A

貧血があれば鉄剤で治療します。出血が多ければ、これを減らす薬を使うこともあります.生理痛がつらければ,鎮痛剤か漢方薬を使うのもよいですが,自覚症状がなければ筋腫がメロンの大きさであっても治療の必要はありません。
しかし、比較的大きな子宮筋腫が疑われた場合は,子宮筋腫とよく似た「子宮肉腫」という悪性腫瘍のことが稀にあります。この区別はエコーでは困難なので、MRIで詳しく調べる必要があります。
「子宮肉腫ではなさそうだ」と判断されれば、手術せずに様子をみてよいのですが、子宮筋腫を持っている人に子宮肉腫が発生しやすいと考えられていますので、定期的な検査で経過観察するべきです。

Q

子宮肉腫とは癌ですか ? 子宮筋腫が癌になりますか ?

A

子宮癌には子宮頸癌と子宮体癌(内膜癌)がありますが、子宮筋腫がこれらの癌になることはありません。
子宮肉腫は子宮筋腫とよく似ていますが、急速に大きくなり、他の臓器へ転移します。
子宮肉腫は癌よりも発生頻度がはるかに低いのですが,転移が速く、抗癌剤や放射線が効かない,死亡率の高い、恐ろしい病気です。
婦人科の診察が内診(触診)しかなかった時代には、手術前に子宮肉腫を診断することができなかったため、子宮筋腫がみつかると「肉腫かもしれない.肉腫になるかもしれない」といって症状のない人も手術が勧められていました。「子宮筋腫が悪性化して子宮肉腫になる」との説は完全に否定できませんが、「子宮筋腫が子宮肉腫にかわることはほとんどない、子宮筋腫のある子宮から子宮肉腫が発生しやすい」という考えが現在では有力です。

Q

子宮筋腫と子宮肉腫はどのようにして見分けるのですか ?

A

症状や内診(触診)ではまったく区別できません。エコー、子宮癌検診(細胞診)、腫瘍マーカー(血液検査)でもほとんど発見できません。手術で摘出したものを顕微鏡で観察する病理組織診断で確定します。このため「手術しないとわからない」といわれてきたのですが、現在ではMRIで疑うことができます。
MRIでは「子宮肉腫または子宮肉腫が疑われるあやしい子宮筋腫」を「あやしくないふつうの子宮筋腫」から区別することができます。また、「肝機能異常の指標とされる血液検査LDHが肉腫の場合高くなることが多い」ということも参考になります。
しかし,子宮肉腫が疑われるあやしい子宮筋腫と子宮肉腫の区別は、やはり、「手術してみないとわからない」ので、この場合は手術するべきです。
子宮筋腫は一人ずつ筋腫のタイプが異なります。筋腫の大きさ・数・できている位置により症状も大きく異なります。だから、筋腫といっても治療が必要でないもの,薬で様子をみれるもの、手術も考えたほうがよいもの、手術しかない(手術するべき)もの、まであるわけです。
また、治療法(手術)にもいろいろありますが、それらの治療効果がどれほどみこめるかを推測し、どれが適した治療法なのかを検討するには、まず正確で客観的な情報を得ることが重要です。
婦人科では従来、内診が重視されてきましたが、子宮筋腫の治療方針を検討する時には、実は内診は重要な意味を持ちません。当施設では原則として内診は行わず、MRIによる画像診断を重視します。
以前は子宮肉腫は、「手術まえに診断はできない。取ってみないとわからない」と考えられていました、現在でも、これを根拠に手術を勧める医師もいます。
しかし、適切に撮られたMRIを、読影能力のある医師が診れば、「典型的なふつうの筋腫」と「肉腫、または肉腫の可能性のある非典型的な筋腫」を区別することはできるのです。

Q

なぜ子宮筋腫ができるのですか ? 予防法は ?

A

原因は解明されていませんが、遺伝子の変異と女性ホルモンが関係しているという点では乳癌と同じです。女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)のどちらも筋腫の発育に関与しています。
人種により発生率に差があり、黒人に多いということがわかっています。子宮筋腫は早い人で20代後半、多くは30代で発見されます。原則的には閉経するまで大きくなり続け、数が増えていきますので40代が症状のピークとなります。大きさと数の増加スピードは個人差が大きく、長期間ほとんど変化しない人もいれば、急速に増える人もいます。残念ながら子宮筋腫の予防法はわかっていません。子宮内膜症の増加は、晩婚や少産化、との関係があると考えられていますが、子宮筋腫では無関係のようです。

Q

子宮筋腫をこれ以上進行させないようにするには ?食事や生活で気をつけることは ?

A

残念ながら、日常生活や食品によって子宮筋腫を治療・予防する方法はないようです。
子宮筋腫は女性ホルモンで発育しますので、閉経すれば卵巣からの女性ホルモンがなくなり、筋腫は小さくなっていきます。
極端なダイエットによる急激な体重減少や、過激な運動が無月経の原因となることがありますが、このような場合は、卵巣からの女性ホルモンが減り、子宮筋腫は発育しないと考えられます。ただし、女性ホルモンの低下は更年期症状や骨粗鬆症などの原因になりますので、これらは、おすすめできません。
ネット上には、生活習慣や食事により子宮筋腫が小さくなったとか、大きくならないようにできるということが書かれていますが、これらはすべて嘘だと思います。
コレステロールや動物性食品、乳製品を制限することは、お勧めしません。動物性高脂肪食はエストロゲン過剰になりやすいという説もあり、乳癌の発生リスクを高めることが確かめられていますが、現在まで、子宮筋腫の発生や進行との関連は証明されてはいません。タバコは女性ホルモンの合成酵素の働きを妨げます。精神的ストレスも女性ホルモンを減らすので、タバコやストレスは子宮筋腫の発育を抑える可能性は考えられますが、予防や治療としては、やはり勧められません。

Q

漢方薬で子宮筋腫は小さくなりますか ? 子宮筋腫に効くサプリメントはありますか ?

A

漢方薬は、子宮筋腫の症状改善にはかなり効果がある場合があります.現在、日本で保険診療で使われている漢方薬は,適切に選択すれば、副作用の心配が少なく、価格も安いので、子宮筋腫を慢性病と考えると、漢方はよい選択と言えます。
残念ながら、筋腫が小さくなるというデータはほとんどないので、多くの婦人科医は、「症状改善には有効なこともあるが、筋腫が小さくなることはない」と考えています。
井上滋夫が、1996年から3年間にわたって発表した「子宮筋腫の漢方治療 超音波計測による検討」の一連の研究では、筋腫核そのものの縮小を裏付けるデータは確認できませんでした。しかし、「子宮全体としての縮小効果はある」という結論が見いだせました。つまり、筋腫がある子宮は、筋腫のまわりの子宮筋層も厚くなっているので、全体として大きくなっているのですが、これに対する縮小効果はあるということです。
子宮筋腫によいというデータが確認されたサプリメントは現在までありません。子宮筋腫に効くとうたった海外のサプリもインターネットで個人輸入できますが、表示されていない薬品を加えているものもあるかもしれませんので、手をださないほうが無難です。ピクノジェノールは、公表されている薬理作用から推測すると、漢方薬と同様に子宮筋腫の自覚症状を改善する可能性はあると思います。
プエラリア、イソフラボンなどの植物エストロゲンについては、子宮筋腫への作用は不明です。ホルモンとしての作用が非常に弱く、たぶん悪化させることはないでしょう。

Q

子宮筋腫があっても妊娠できるでしょうか ?

A

無症状で小さな場合はそのまま妊娠、出産が可能です。最近は初回出産年齢が30歳近くまであがっていますので、子宮筋腫を持っている妊婦さんは珍しくありません。昔はエコーが普及していなかったため小さなものはみつかりませんでしたが、現在では発見率が高くなっています。
子宮筋腫による症状がすでにあれば、妊娠しにくいことや流産しやすいことが予測されます。このような場合は粘膜下筋腫であることが多く、子宮を傷つけることが一番少ない子宮鏡手術がお勧めです。

Q

妊娠中に子宮筋腫が見つかりましたが、心配ないですか ?

A

子宮筋腫があっても、赤ちゃんの発育に影響したり、赤ちゃんに異常がでる確率が高まる心配はありませんが、妊娠中には子宮筋腫は必ず大きくなります。赤ちゃんを育てるために女性ホルモンが急増し子宮が大きくなっていきますが、子宮筋腫も女性ホルモンに反応して大きくなり、妊娠中期に痛むことがしばしばあります。まれに赤色変性という変化が起こります。切迫流産や切迫早産と誤解され、日本では入院や点滴などの治療を勧められることが多いですが、最近の海外論文では「子宮筋腫があっても、実際に流産や早産の率が高くなることはほとんどない」ことが示されています。
また、リンゴ大くらいまでの大きさなら、お産の時に障害になることは少ないので、必ず帝王切開とする必要はありません。しかし、逆子の原因となったり、お産に時間がかかったり、産後の出血が多くなったりすることがあります。帝王切開の時に同時に子宮筋腫を摘出することは可能ですが、妊娠子宮は出血しやすいので、手を付けない方針の医師もいます。
筋腫は妊娠の妨げになることは間違いありませんが,妊娠への影響の程度は,発生部位と大きさにより異なります。
筋腫の発生部位には体部と頸部があり、それぞれさらに、外側(漿膜下)、筋層内、子宮腔内・頸管内(粘膜下)、に分けられます。
また、筋腫は1個しかできないということはほとんどなく、大きさが異なる複数の筋腫があるのが普通です。
筋腫はバリエーションが多く,ひとりひとり異なるので,妊娠への影響もさまざまで予測困難です。
妊娠への影響の強さは、一般論としては、大 > 小、多 > 少、粘膜下 > 筋層内 > 漿膜下、体部 > 頸部、の順となります。

Q

子宮筋腫の治療にはどのようなものがありますか ?

A

子宮筋腫はありふれた病気で、詳しく調べれば女性の4割くらいにみつかりますが、無症状のことが多いので健診などで見つかっても放置してかまいません。また、命にかかわる病気ではないので、症状があっても不妊や流産の原因になる場合以外は「苦痛に思わなければ、治療は不要」です。
筋腫の症状は、
①生理の出血が増え長引き、貧血となる。
②出血の増加に伴って生理痛がひどくなる。
③筋腫の圧迫のため,膀胱に尿が十分ためられなくなる(頻尿)、または尿がでなくなる。
などです。
生理時に悪化する腰痛は筋腫が関係していることがありますが、腰痛は筋腫の症状ではありません。子宮筋腫は女性ホルモンにより増大し、女性ホルモンが低下する閉経後は症状がなくなるので、治療の必要がなくなりますが、大きな筋腫がある人は、55歳を超えても閉経しないことが多いです。
無症状なら治療は不要ですが、症状があれば治療します。子宮筋腫の大きさ・位置・数はさまざまで、症状も個人差が大きいので、適する治療法はひとりひとり異なってきます。
薬では、鎮痛剤、止血剤、人工的閉経状態にする薬GnRHアゴニスト(スプレキュア、リュープリン、ナサニール)、漢方薬、などが用いられます。子宮筋腫の症状の多くは増血剤(鉄剤)、鎮痛剤、漢方薬で治療でき、絶対的に手術が必要なケースは、わずかです。GnRHアゴニストによる偽閉経療法(いわゆるホルモン治療)は、女性ホルモンを閉経レベルにまで低下させ、生理を止め、生理に伴う症状を解消し、筋腫を縮小させます。高価な薬で保険では6か月まで使用できますが、薬をやめれば元に戻ります。筋腫を小さくすることで内視鏡手術が可能になるか、手術が安全に行えるようになるので術前治療としては重要な薬です。女性ホルモンを閉経レベルにまで低下させるため、ほとんどの人に副作用として更年期の症状「顔・上半身のほてり」が起こりますが、治療が続けられないほどの症状が出る人はめったにいません。
低用量ピルは不正出血のコントロールと生理痛の軽減には効果があり、ルナベル、ヤーズなどは子宮内膜症や生理痛に保険で使えますが、子宮筋腫の縮小や増大抑制の効果はありません。また、子宮内膜症の内服治療薬ディナゲストは子宮内膜に対して抑制的に作用しますので、生理の出血は減りますが子宮筋腫の縮小や増大抑制には無効です。
子宮腔内に挿入留置する避妊器具として開発された「ミレーナ」も「過多月経」および「月経困難症」子宮内膜に対して抑制的に作用しますので、生理の出血は減りますが子宮筋腫の縮小や増大抑制には無効です。
薬での治療が難しい場合は手術を考えます。子宮筋腫だけを取り子宮を残す「筋腫摘出術(核出術とも言います)」と、子宮を全部取る「子宮全摘術」のふたつに大きく分けられます。筋腫摘出術は妊娠の可能性を残せますが、再発の可能性も残ります。
筋腫摘出術には、アプローチにより3種類の方法があります。体を傷つけず入院期間が短いという点で、子宮鏡>腹腔鏡>開腹、の順に優れています。子宮全摘も3種類あり、おなかを切らない腟式>腹腔鏡>開腹の順に優れています。その他、子宮動脈塞栓術(UAE)、集束超音波治療(FUS)、マイクロ波子宮内膜焼灼法(MEA)などの新しい切らない治療があります。UAE、MEAは条件を満たした施設では保険診療として可能になりましたが、FUSは期待されたほどの効果がなく現在では、ほとんど行なわれていません。

子宮筋腫治療フローチャート

私が考える子宮筋腫治療の選択基準と流れです。

Q

子宮筋腫の手術で子宮を失うとどうなりますか ?更年期障害の心配は ?

A

子宮を取ると妊娠はできなくなりますが、子宮筋腫の再発や子宮癌発生の心配がまったくなくなり、避妊と生理の煩わしさから開放されるというメリットがあります。子宮を取ると生理がなくなりますが、これは閉経したのではありません。閉経とは卵巣の寿命が尽きたため女性ホルモンの分泌が止まり、子宮内膜が出血しなくなった状態です。子宮全摘後は出血するところがなくなるので生理はなくなりますが,卵巣が残れば卵巣活動に伴う体や心の変化は手術前と同じです。生理はなくても、生理前の乳房の張った感じを自覚する人もいます。また、腟の状態は変わらないので、男女ともにセックスの感じ方が変わることはありません。「子宮全摘の後に体調を崩して、つらかった」という体験談が聞かれ、これを信じている人は多いようです。以前は、子宮筋腫の手術と同時に,卵巣も取る医師が多かったので,すぐに更年期障害が現れる人もいたようです。
現在の子宮筋腫の手術では,卵巣は残すので女性ホルモンが低下することはなく、体調を崩すようなことはありません。子宮全摘をするのは40代半ばの人が多いので、この年齢では子宮全摘をしなかったとしても、しばらくすると更年期障害が出てくることがあるのです。
「子宮を取っても卵巣を残せば体へのマイナスはない」ということを、しっかり認識していない人は、「心理的な喪失感と生理がないという実感」から、自然経過としての更年期障害を「子宮全摘のせい」と思ってしまうことが多くなるようです。

Q

自分の子宮筋腫に最適な治療を選ぶには ?

A

①子宮筋腫の正確なタイプ診断、
②さまざまな治療法を自分の子宮筋腫に当てはめた場合の効果予測、
③効果が期待できそうな治療法についての長所と短所の比較、
最適な治療を選ぶにはこれだけの手順を経る必要があります。
従来は、子宮肉腫の術前診断が困難であったこともあり、にぎりこぶし以上の子宮筋腫は手術が勧められました。「妊娠可能年齢で希望があれば開腹筋腫摘出術、それ以外は開腹子宮全摘術」と、画一的な治療が行われてきました。
しかし、現在は子宮筋腫のタイプ診断が進化し、画期的な治療機器の開発により治療法も多様化しています。治療法により入院・休業の日数、費用は異なり、妊娠を希望するか,再発しない確実性を重視するか、閉経までの長期の服薬や通院をしても手術はしたくないか、など、患者さんそれぞれに、こだわりや事情があります。個々の患者さんの希望や、ライフスタイルは尊重されるべきです。子宮筋腫の治療において、「医学的な推奨」はあっても、「選択肢はこれしかない」というケースは本当はめったにありません。
たとえば。手術にはいくつかの方法がありますが、おなかを切らない方法が可能であれば、当然それが優れています。おなかを切らない方法が可能かどうかは、患者さんの側の条件に加えて、医師の側の条件で決まります。技術に優れた医師でも不可能な手術もあれば,医師の技術不足のためできない場合もあります。医師が患者さんにどの手術方法を勧めるかは、それぞれの医師の技能の範囲で医師自身が決定しているわけです。
子宮鏡や腹腔鏡での手術が可能か?、子宮筋腫を持ったままの妊娠・出産が可能か?、これらの判断は、これらの経験が豊富でないと的確にはできません。現在の多様な子宮筋腫治療のすべてに精通する婦人科医は多くはいません。それらの治療法を高いレベルで提供できる病院も多くはありません。
筋腫で死ぬことはないので、原則として子宮全摘は必要ないですが、手術したほうがいいかどうかは、別の問題です。手術には、「得られる利益」と「失うもの、負うべきもの」があり、得られる利益が全くないなら、「手術は不要」と言い切れます。
不快な症状や苦痛を我慢できる人には「手術は不要」ですが、手術で不快な症状や苦痛がなくなるなら、得られる利益があるわけですから,一般論としては「手術が不要」とは言えません。
「手術により失うもの、負うべきもの」としては、「入院に要する費用と時間、痛み、傷跡」など必須のものと、「麻酔や使用する薬の副作用、事故、合併症、輸血」など、運悪く遭遇するものがあります。筋腫の状態と症状は千差万別、ピンからキリまであり、手術の方法も複数あります。「どの手術が可能で適するのか」、「手術をした場合としなかった場合の違いの予測」、これらを患者さん自身が理解した上で選択することが望まれますが、そのためには正確な診断と分かりやすい説明ができる医師に出会えることが必要です、あなたの子宮筋腫を正しく知り、さまざまな治療法の特徴を理解し、納得のいく選択をしてください。